心温まる字彫り職人志望の好青年
ひと月くらい前の出来事ですが、
「字彫りを覚えたいのですが、求人をしていませんか?」
…と、20才代の青年が突然弊社に来られました。
その青年は、以前には墓所での施工工事の仕事をされていたとのことですが、
今度は墓石への文字彫りの技術を覚えたいとのことです。
しかし、あいにく弊社では、自社での文字彫を行っていないため、
残念ながら雇用させていただくことは不可能なので、
取引先の字彫り業者さんに、職人見習いの募集をやっていないか、
電話で尋ねてみましたが、そこも今は人は要らないとのことでした。
しかたなく、神戸市内で書家直筆の文字を使用し、
自社で墓石文字の彫刻を行っていそうな石材店を、
何軒かリストアップしてメモに書いて渡してあげたのです。
それから、一か月ほど経った数日前に、その青年が再び弊社にやって来ました。
あいにく、私は外出中で会社には居なかったのですが、
「就職先が決まりました」との報告に来てくれたそうです。
最近の世の中では、年始の挨拶ですら年賀状も書かず、
メールで「あけおめ!」で済ましてしまう希薄なご時世に、
わざわざ、手土産を提げてまで、報告に来てくれるなんて、
なんと律儀な青年がいるものだと感心させられました。
結局、神戸市内で職は見つからず、
小豆島にて字彫りの勉強をされるそうです。
ほんのちょっとした人の好意に対してでも、
これほどまでの行動ができる彼ならば、
きっと、墓石に文字を彫刻する時でも、
一人一人のお施主様と亡くなられた仏様のことを、
思い浮かべながら彫り上げていくことでしょう。
これから字彫りを覚えて一人前の職人になった際には、
彼が彫り上げた作品をぜひとも見てみたいものです。
わざわざ、報告をしにきていただき、有難うございました。
新天地で技術習得に向かって頑張ってください。
かげながら、応援させていただきます。