「第20回墓石大賞」受賞モデルをリデザインしたお墓【神戸市立鵯越墓園:TH家】
ご提案から設計・御見積りまで
2015年(平成27年)6月に奥様を亡くされたTH様。
御年90才を過ぎておらるTH様はとてもお元気で、
モダンなオリジナルデザインのお墓を希望されました。
お嬢様とお婿様が選んだ神戸市立鵯越墓園の希望区画が確保でき、
TH様が選んだのは当社墓石ショールームに展示の「第20回墓石大賞」受賞モデル。
▲「第20回墓石大賞」受賞モデル
墓石本体の基本デザインはこの形で石種のみ一部変更を希望されました。
メイン部分には、インド・アンドラプラディッシュ州産で産出される、
黒に近い濃い緑色で重厚な雰囲気を持つ「M1-H」をお選びになられました。
墓石のアクセントと外柵の主要部分には、インド・カルナタカ州で産出される、
上品なグレーの色調が特徴の「アーバングレー」をご提案させて頂きました。
これら、いずれの石も硬い石質と極めて低い吸水率を誇るため、
降雨後の水シミなども出ない耐久性に優れた石と言えるでしょう。
▲3次元カラーCAD図面
ベンチを設け、柔らかなシンプルなラインが特徴のシンプルな外柵は、
お参りのしやすいバリアフリー仕様にて設計させて頂きました。
墓所基礎工事:その1「鉄筋コンクリートべた基礎工事」
さて、いよいよ墓所での基礎工事開始です。
ユンボを使って墓所全体を30㎝くらい掘り下げます。
割栗石を入れて砕石を敷き詰めジャンピングランマーで転圧します。
D10(直径10㎜)の鉄筋を20㎝ピッチで配筋いたします。
丸い筒は、水抜き穴を確保するためのものです。
型枠を組み、コンクリートを流し込んで「べた基礎」の完成です。
外柵の構造に合わせて、コンクリートの高さ位置を変えてあります。
十分に硬化させるまで、このままの状態で約1カ月間養生いたします。
家もお墓も同じで、やはり「基礎工事」が大切です。
その間に、私は中国・福建省の弊社指定工場に製品検品に出向きます。
中国・福建省、弊社指定工場にて製品検品
墓石棹石上部のアール加工の形状が思っているイメージと違ったので、
工場の職人さんにお願いして、その場で削って修正してもらいました。
製品の制作を石材商社に頼らず自ら中国に出向くからこそできるのです。
外柵(巻石)部材も中国の加工工場で仮組みして各部分のサイズ等を検品。
ベンチと外柵との結合用穴あけなど、細かい部分もしっかりチェック。
霊標(墓誌)の研磨精度や文字彫刻スペースを確認します。
この検品と先ほど加工修正を依頼した墓石棹石の磨きが終わり次第、
すべての部材を梱包して、日本へ向けて船積み出荷の段取りです。
墓所基礎工事:その2「エフロ防止下地工事」
基礎工事の養生期間も終わり、続いて第二段階の基礎工事です。
外柵(巻石)のバリアフリー部分の石張り施工をする際には、
一般的には、鉄筋コンクリート基礎工事の上にモルタルを敷き、
その上に、石を貼っていくという工法を用います。
しかし、このモルタルを使った工法による石張り工事は、
石の表面がボロボロになる「エフロレッセンス」の危険性があります。
「エフロレッセンス」については、羽黒石材工業㈱の中野さんが、
画像付きで詳しく解説してくれていますのでこちらをご覧ください。
「石の表面がボロボロになる?怖いエフロレッセンスの恐怖!!」
そのため、弊社では、石との相性が悪いモルタルを使用せず、
コンクリート基礎の上にみかげ石を用いた下地工事を行った上に、
石材用ボンドを使用して石張り施工をさせて頂いております。
外柵(巻石)据え付け工事
中国の指定工場で検品を終えた各部材が日本に到着後、
墓石の周囲を囲む外柵(巻石)の据え付け工事です。
お家の工事で言うところの「外構工事」のようなものです。
巻石部材の各コーナー部分を、ステンレス製L字金具を用いて、
内側からアンカーボルトでしっかりと固定することにより、
土圧等により、巻石が開いたり外れたりすることを防ぎます。
もちろん、モルタルを使わず石材用ボンドを使用します。
外柵の中央には、大切なご遺骨を納めるカロート(納骨室)を設置します。
外柵工事完成後、またしばらくの間このままの状態にしておきます。
墓石、霊標への文字・模様の彫刻
弊社の場合、墓石本体、霊標、そして模様彫刻を施す外柵部材に関しては、
中国・福建省、厦門(アモイ)の港から、神戸に運ぶのではなく、
一旦、香川県、高松市の「庵治・牟礼(あじ・むれ)」に運びます。
「庵治・牟礼」といえば、日本石材三大加工地の一つで、
200軒ほどの石材加工関連工場が集まる日本最大の石材加工地です。
そこには、最高の技術力を誇る様々な分野の石職人さん達がいます。
弊社がここに彫刻部材を搬入するわけは、卓越した技術を誇る、
宮本力夫文字彫石材さんに、文字や模様を彫ってもらうためです。
文字や模様を彫刻する前に、原寸大原稿や墓石の型紙をつくり、
ミリ単位の調整をし、慎重に文字や模様の彫刻位置を決めていきます。
墓石据付(設置)工事
いよいよ工事も最終段階、墓石本体や霊標の設置工事です。
石材用ボンドを用いて、花立や香炉などを固定します。
震度7に対応した墓石免震システム「安震はかもり®」を装着します。
お墓の最も大切な部分である棹石(仏石)を慎重に設置します。
故人の名前を刻んだ霊標(墓誌)を設置して工事完了です。
墓石棹石の正面と外柵のバリアフリー部分にはアクセントとして、
新進気鋭の墓石デザイナー・福田和哉氏がデザインした、
墓石用彫刻模様「Add」の中から「桜」を選んで彫刻させて頂きました。
耐久性に優れた2種類のインド産みかげ石を使用した、
流れるような優しいラインが特徴のバリアフリー墓石の完成です。
作品データ
■石碑:幅840×奥行980×高さ975
<使用石種>
・M1-H(インド・アンドラプラディッシュ州産)
・アーバングレー(インド・カルナタカ州産)
■外柵
<使用石種>
・M1-H(インド・アンドラプラディッシュ州産)
・アーバングレー(インド・カルナタカ州産)
■墓所:神戸市立鵯越墓園
■設計・制作・施工:株式会社 第一石材