6.外国産墓石は中国でつくる以外に道はないのか?
戦後の日本と同じ道を歩んでいる中国経済。
第二次世界大戦後、マッカーサー率いるGHQによって、
日本円と米ドルの交換レートは1ドル=360円に設定されました。
その後、1971年8月15日、ニクソン大統領によって、
『新経済政策』が発表されるまでの長きにわたって、
円とドルは、固定相場制の1ドル=360円時代が続いてきました。
アメリカが大幅な円安レートを容認してくれていたので、
繊維、家電、車など日本の輸出産業が数多く育ちました。
まるで、ここ最近までの中国と同じ状況でした。
その後、円とドルは変動相場制になりましたが、
バブル崩壊までは、好景気に支えられてきました。
しかし、リーマンショック以降、急激な円高になり、
日本の家電メーカーなど、輸出産業は大打撃を受けました。
中国の人民元は現在、アメリカからの元切り上げ要求をかたくなに拒否しています。
現在、中国政府も細心の注意を払い為替の管理を行っており、
日本のその昔の円とドルの固定相場制と同じような状態です。
ここ2、3年、1元あたり12円~13円台で推移してきた人民元が、
平成25年1月になってからは1元14円台まで高騰しております。
これが、今の円=ドルのように完全変動相場制となり、
元が切り上がって、25円~30円位になったとすれば、
中国の石材加工工場でつくられる墓石は今の倍以上の値段になります。
ちなみに、平成25年6月3日、午前9:30現在の為替レートは、
1元=16.369291円となっており、昨年の同時期より2割以上も高騰しています。
つまり、去年は80万円で仕入れることができた石材製品が、
同じものであっても、現在では100万円以上しているということです。
値段は高くなるは、製品レベルは全体的に下降気味である中国製品ならば、
いっそのこと、中国以外に生産拠点を移せばと思われる方も多いでしょう。
中国以外の新興国での墓石加工は可能なのか?
実際に一部ではベトナムなどの新興国で加工を始めたりもしていますが、
加工技術のレベルは中国の石材加工工場と比べるとまだまだ遠く及びません。
墓石の加工製作は人の目と、手加工に頼る部分が多くいため、
多くの工業製品のように、予め決まったカタチの製品を、
大量に生産するといったライン化による製造は不可能なのです。
そのため、他の製品の様に簡単に生産拠点を移すことは困難です。
なぜならば、墓石には天然素材である石を使用するため、
実際に切って磨いてみないと品質の善し悪しはわかりません。
また、墓石のカタチは「神戸型」「京都型」「広島型」など、
地域によって形も異なり、墓地の大きさによってサイズもまちまちです。
それに加えて、近年人気のオリジナルデザイン墓石などは、
それぞれのカタチが異なるためより高度な加工技術が要求されます。
生産拠点を中国から他の新興国への移行が難しいもう一つの理由として、
工場の建設や機械工具などの初期設備投資の問題があります。
家電や自動車メーカーなど、日本の会社が海外に生産拠点を構える際には、
多くの場合、日本の会社が費用の全額を拠出して海外進出をするか、
または、一定の額を出資し相手国の会社と合弁会社を作るかが一般的です。
しかし、墓石の加工製作に関してはこれに当てはまらないのです。
今から二十数年前に、日本の石材商社が中心となって、
墓石等の石材製品の加工・製作拠点を中国に移した際には、
日本側の石材商社は資金の投入をせずに技術の供与だけで、
工場にかかる資金はすべて中国の工場側が捻出してきました。
これには、日本の石材商社が進出する以前の昔から、
石材加工業の土壌がすでにあった中国・福建省だからできたことです。
現在でも、完全独自資本で中国に生産拠点を構えている
日本の石材商社は、ほんの数えるほどしかありません。
そんな状況の中、中国以外の新興国に日本の石材商社や石材店が
今後新たに独自で資本投資してまで進出を考えるでしょうか?
では、ベトナムやインドネシア、ミャンマーなどの現地の人たちが
独自で資金を調達して石材加工工場を開設するだけの資本力があるでしょうか?
以上の二つの理由により墓石の加工・製作に関して現段階で脱中国は難しく、
今後もしばらくは、中国側とうまく付き合っていくしか方法はありません。
それもこれも、今後の値上がりの幅次第ですが…