どうなる?2015年、お墓の値段と品質
1.2015年、お墓の値段はどうなるのか?
ここ3年ほど、毎年この時期になるとこの内容のブログを書かせていただいております。
このブログを読まれる前に以下のブログからお読みいただくことをお薦めいたします。
中国産墓石の仕入れ価格の移り変り
ここ数年、中国産墓石の仕入れ価格は旧正月(今年は2月19日)明けには、
必ずといっていいくらい値上げというのが当たり前になりました。
その大きな理由の一つが中国の石材加工に従事する工員の賃金高騰です。
石材加工の仕事というのは、いわゆる「3K」に属する業種のため、
ひと昔と比べ、生活水準が裕福になった現在の中国では、
行員のなり手が少ないのが賃金高騰の理由の一つです。
しかし、この石材加工に従事する工員達の賃金については、
昨年のブログにも書きましたが、中国では決して安い賃金ではありません。
弊社が取り引きする、中国・福建省の最大手の石材加工工場の賃金は、
技術レベルによっても異なりますが、月額5,000元~8,000元とのことです。
日本円に換算すると、1人民元=約19円(2015年1月12日現在)として、
月額で約95,000円~152,000円という、中国ではかなりの高賃金です。
では、この金額がいったいどのくらい高賃金かというと、
中国の大卒初任給の平均月収が約3,000元(約57,000円)、
北京で働く勤労者全体の平均月額賃金が約4,200元(約79,800円)というから、
この金額がいかに高賃金かがお分かりいただけるでしょう。
その他、輸送コストや諸々の経費増大も値上げに起因しています。
ただ、これらの値上げだけなら、まだ辛抱できます。
一番大きな打撃は中国側による値上げよりも「円安」なのです。
2010年10月~2012年12月あたりまでの円相場は1ドル80円前後で推移していました。
そして、2012年に民主党政権崩壊の後、第二次安倍内閣が発足後、
2013年4月~2014年8月あたりになると、円相場は1ドル100円前後となりました。
中国製品を購入するのに人民元ではなく、どうしてドルが関係するのかというと、
現在の日本と中国との貿易では、円と人民元との直接取り引きはなく、
すべて、ドル建てでの支払いとなっているため、円=ドル相場が大きく影響します。
石材商社が中国から仕入れる石材製品の価格はすでにこの時点で、
2011年、2012年頃の仕入れ価格と比べると約2割の値上がりです。
石材商社を介さず、石材製品の取り扱いをしている当社も同じです。
当然、こうなると、石材商社が小売墓石店に卸す製品単価も値上がりしました。
しかし、この時点で消費者に値上げをした墓石店はほとんどなかったのでは…。
そして、さらに円安は進み、昨年2014年12月には1ドル120円を突破し、
2015年1月12日現在も、1ドル118円前後の相場が続いています。
この2年間の間で、円相場は1ドル=約80円から120円、
つまり、仕入れ価格は円安の影響だけで1.5倍に膨れ上がったのです。
もちろん、石材商社も今年1月から卸値を値上げをした会社もありますし、
2月の中国の旧正月明けを待って値上げをするところもあるでしょう。
ちなみに、円=人民元の相場を参考までに見てみると、
2011年、2012年あたりは、1元=12円~13円で推移していました。
2015年1月12日の相場は、1元=約19円です。
分かりやすく、両替レートで説明すると、2年前迄は1万円=800元前後あったものが、
今では、500元ちょっとしかなく、製品検品など中国への渡航経費にも影響します。
これまで消費者向けに値上げをせずにどうしていたか?
ここ、2~3年前から中国産墓石の仕入れ価格が高騰していますが、
消費者に対して値上げをした墓石店はほとんどなかったのではないでしょうか。
では、一体墓石店はどうしていたのでしょうか?
実は、値上げを踏みとどまっていたのです。
つまり、値上げをしたくてもできなかったのです。
値段を上げると他社との競合に負けてしまうので、
利益を圧縮し、経費節減等のコストダウンを続けてきました。
これを受けて、同じ石種でも低いランクの石を使用し、
工賃の安い工場で加工し、少しでも安価で販売できる商品を卸し、
墓石店への販売支援のための苦肉の策を講じていた石材商社もあります。
インド産の「アーバングレー」が良い例です。
※詳しくは「アーバングレー最新情報/2014年秋」をご覧ください。
しかし、この方法は消費者への値段は変わっていなくても、
製品レベルが下がっているので、実質的には「値上げ」と言っていいでしょう。
2015年の中国産墓石の値上げはあるのか?
アベノミクスの影響で、日本では様々なモノの値段が上がっています。
中国産墓石の値段も単純に為替相場だけで仕入れ値が1.5倍、
中国の石材工場側の値上げ分を含めるともっとです。
さすがに、ここまで仕入れ値が上がると値上げはやむを得ないでしょう。
利益圧縮、コストダウンにも限界があります。
逆に、極端に安過ぎる墓石は「何かある?」と考えておいた方が良いかも分かりません。
2.今後の中国産墓石市場と品質
中国の墓石業界の危機
ここ20年間で、中国はめざましい経済発展を成し遂げました。
そのスピードは、日本の高度経済成長をしのぐ猛烈な速さです。
中国における石材加工業も、この経済発展と共に成長してきました。
その当時は、中国政府から簡単に開業資金を借り入れることができ、
広大な土地と、豊富な出稼ぎ労働者を背景に大規模な工場が数多く出来ました。
最盛期には、世界一の石材加工地である中国・福建省では、
その数、全体で3,000を超える石材加工工場があったようです。
しかし、2008年9月のリーマンショックを境に廃業・倒産等で、
工場の数は、当初の3分の1の1,000ほどまで減少したのです。
中国・福建省の中でも、墓石加工の中心部である恵安地区には、
2010年当時には、約400件の墓石を加工する工場がありました。
しかし、2014年には半分の200社以下に減少し、
その内の数十社が債務超過が原因で倒産しています。
そこには、日本経済の不振、消費税増税前の駆け込み需要の余波や、
日本人の古来からの風習である「亡き人を手厚く弔う」という意識が、
最近では、希薄になっていることも原因に挙げられます。
潤沢な資金力を背景に規模を拡張している工場もあれば、
工場を維持するだけで、毎月大きな赤字が出るという工場もあります。
暇な工場は、正に「閑古鳥が鳴いている」状態である。
工員たちの賃金は出来高払いのため、仕事がなければ収入もない。
収入がなければ、他の業種に仕事を変える。
正に悪循環である。
2015年、中国産墓石の品質は?
旧正月になると、多くの工場は長期の休業となり、
工員たちは、それぞれ家族が待つ郷里へと帰省します。
現在の様な中国の石材加工工場を取り巻く環境下で、
旧正月が明けた後、どれだけの行員が工場に戻ってくるかも疑問です。
戻ってきても、仕事がなければ意味がありません。
また、同じ戻って来るなら順調に仕事がある工場に移籍するものもいます。
今後、中国産墓石の出来栄えにますます差が生じるのではないかと思います。
「中国産墓石は安い!」というのは過去の話になりつつあります。
消費者に良い製品を届けるため、若干値段は高くつくが、
良い原石を取り扱い、技術レベルの高い石材加工工場を選ぶか、
消費者にこれまでと同じ値段は無理としても、
少しでも安い値段で墓石を提供するために、単価の安い工場を選ぶかによって、
製品の良し悪しが、これまでにも増して差が出てくるでしょう。
消費者に満足していただける製品を提供するため、
例年にも増して今年の中国石材事情には目が離せません。
ただ、ほとんどの墓石店は、石材商社を介して中国産墓石を仕入れるため、
中国のどこの工場で誰が手掛けた墓石かを知っているところは少ないでしょう。
3.国産墓石の値段はどうなる?
国産墓石への回帰となるか?
円安の影響により中国産墓石の価格高騰が予想されるからといって、
いきなり大半が国産墓石への回帰に繋がるとも思えません。
というよりも、現在「国産墓石」と称して販売されているものは、
大半が中国で加工されている現状では『国産墓石も実は中国産』ではないのか?
一般消費者には何か分かりにくいですね。
国産墓石というと、日本の石を日本で加工されていると思われがちですが、
日本の石を中国に送り、中国で墓石として製品化されているものが大半です。
加工は中国で、材料だけが国産なのです。
だが、日本の現行法律では「加工は中国」と明記する義務はないのです。
当社では、このたぐいの国産墓石はお勧めしていませんし、
もし、ご注文を頂いても一切の取り扱いをしておりません。
ただ、国産の石材も原石の値上げがはじまっています。
昨年は、「天山石」の値上げがありましたし、
今年からは「大島石」の値上げが決まっています。
いずれも、2割以上のかなり大きな値上げ幅です。
中国産墓石の値上がりだけではなく、他のモノと同様に、
日本で加工される「純国産墓石」の値上がりも必至でしょう。
ただ、中国で加工される国産墓石と称されるものが値上がりするのなら、
少々高くついても、日本で加工した「純国産墓石」の方が安心度は高いでしょう。
「純国産墓石」のすべてが良いとは限らない!
皆さまの家の近くには、数多くの石材店があるでしょうし、
墓石を取り扱う仏壇店、ギフト店、葬儀社などを含めると相当な数です。
それらのすべての墓石店が、最高品質の国産原石を使い、
腕の良い石職人が手掛けた墓石を提供できるかというと決してそんなことはありません。
そこには、老舗だから、大手だからなんてことは関係ありません。
ホントに良い原石を使った国産墓石を手に入れるためには、
やはり「石材店選びがすべて!」であると言っても過言ではありません。
このことについて、富山でお墓の無料相談サイトを主宰する宮崎様がブログに書かれています。
※詳しくはコチラ!
これは、何もお墓だけに限ったことではありません。
青森の大間で採れた最高級のマグロは限られた寿司屋にしか行きません。
最高級の神戸ビーフも同じです。
これらは、高いお金を払ったからといって手に入るというものではなく、
生産者側と仲卸業者、そしてお店側とのこれまでの人間関係によるものです。
また、同じ一匹のマグロでも大トロから赤身まであります。
どの部分をどのお客に出すかは、店主次第なのです。
マグロや牛肉は、食べると美味いか不味いかがある程度は分かりますが、
お墓に使う石の良し悪しは、一般消費者にはまず分からないでしょう。
問題は、あなたが買おうとしている墓石店に、
最高品質の原石が入ってくるルートがあるかどうかです。
今まで、「中国加工の国産墓石」ばかりを扱っていた墓石店が、
いきなり丁場の石材加工工場に「純国産墓石」の製品を発注して、
はたして、良い原石を使った墓石を提供してくれるでしょうか。
…というより、注文自体を受けてもらえるかどうかも疑問です。
だから、墓石店の営業マンはとんでもないウソをつくのかも分かりません。
※詳しくは「石材店は何故こんなウソを言うのでしょう?」をご覧ください。
中国産墓石を買うにしても、国産墓石を買うにしても、
石材店選びには、最新の注意が必要であることには変わりありません。