新型コロナ+円安+石材不足+人材不足/2023年どうなる?お墓の値段
こんにちは。兵庫県神戸市兵庫区にある株式会社第一石材の能島です。
(一社)日本石材産業協会認定の「1級お墓ディレクター」です。
のじま
今や、日本国内に流通している80%を超えるお墓が中国でつくられている状況を考えると、日本の墓石業界は中国抜きでは立ち行かないと言っても過言ではありません。
しかし、このところ、その中国での墓石加工に暗雲が立ち込めてきました。
昔のように、「お墓はすべて日本でつくる」というところまでには至っていませんが、あまり良い状況ではないことだけは確かです。
その原因はいくつかありますが、大きくは以下の5つです。
- 中国の人件費の高騰
- 石材加工従事者の不足
- 新型コロナウィルス
- 原材料(石材)不足
- 円安+諸物価の上昇
これらの要因で、中国における石材加工事情が大きく変わろうとしています。
それは、あなたが購入を考えているお墓の価格や品質に大きく影響を及ぼすかもしれません・・・
今回の記事は、この5つの要因について詳しく解説していきます。
目次
1.中国の人件費の高騰
かつては、安い労働力を武器に安価な製品を大量生産し、「世界の工場」と称された中国ですが、急激な発展を成し遂げ、今や世界第二位の経済大国です。
1990年頃から始まった中国での墓石加工は、安い価格でお墓を提供することが目的です。
ところが、現在の中国は人件費の高騰により、安価な労働力で物をつくれる国ではなくなりました。
すでに、衣料や日用品などの分野では、他の新興国に製造拠点をシフトしています。
しかし、墓石の加工は天然の石を人の手でつくり上げていくものだけに、工業製品のようなわけにはいかないのです。
高い労働力になった現在でも、日本よりは多少安いという理由で中国に依存しているというのが現状です。
中国産の墓石なら「安い」という時代は、すでに過去のものになりつつあります。
2.石材加工従事者の人材不足
中国の石材加工工場で働く工員たちの多くは、内陸部からの出稼ぎ労働者です。
現在のように裕福ではなかった時代においては、郷里では十分な収入が得られないため、遠く離れた南東部の福建省に集まる石材加工工場に工員として出稼ぎに来るのです。
旧正月(春節)から翌年の旧正月までの一年間、家族と離れての単身赴任です。
単身赴任といえば聞こえは良いが、決して快適な環境ではありません。
それに加え、出来高払いの完全歩合制です。
そんな状況でも、お金のためだと辛抱しながら、石材加工の仕事を続けてきました。
しかし、今や状況が違います。
中国は裕福になりました。
わざわざ、出稼ぎまでして「3K」である石材加工の仕事を選ばなくても、郷里でそこそこの仕事にありつけるのです。
これまで長く働いてきたベテランの工員は高齢でどんどん辞めていくにもかかわらず、若い人たちのなり手が減っている。
その結果、中国の石材加工業界全体が工員不足となっており、製品の品質低下につながっています。
中国産墓石といっても、石材加工工場ごとに墓石の品質が大きく異なりますので注意が必要です。
3.新型コロナウィルス
2019年12月に中国の武漢で初めて報告された新型コロナウイルス感染症は、今もなお世界的な流行を見せています。
そして、その影響は中国の石材加工業界にも影響を及ぼしています。
世界一の石のマーケットである中国福建省には世界中の石が集まり、墓石等の製品に加工されています。
しかし、中国の「ゼロコロナ政策」により、中国の石材加工業者が海外に原石の買い付けに行けないのです。
特に、インド産の高級黒みかげ石「クンナム」の在庫が品薄状態です。
たまたま、クンナムの在庫を豊富に持っている石材加工工場があっても、技術力の低い工場であったりします。
原石だけ譲ってくれればありがたいのですが、そうはいきません。
墓石の製作も依頼しなければならないのです・・
そうなると、製品精度に影響を及ぼしますので、当社としてはあきらめざるを得ません。
わざわざインドまで買い付けに行かなくても、電話やメールで注文できそうなものですが、石は天然のものだけに、現物を自分の目で確かめる必要があるのです。
「過去に、インドの採石業者に電話でクンナムを注文したことがあるが、送られてきた原石はキズだらけで使い物にならなかった」という話を中国の石材加工工場の社長に聞いたことがあります。
その社長いわく、「インド人は信用できない」とのことです。
中国人が言うのだからよっぽどのことなのでしょうね(笑)
4.原材料(石材)不足
新型コロナの影響によるインド産黒みかげ石を中心とする輸入石材の品薄に加え、中国で採掘される石材も品不足状態になっています。
その原因は、中国政府の方針による、数々の採石場の閉鎖です。
中国福建省の石材加工工場は沿岸部に集まっています。
そこに石を運ぶには、搬コストを考えると、なるだけ近いところで石を採掘する方がベストです。
中国が発展途上であった頃なら、それでも良かったかもしれません。
しかし、今や世界第二位の経済大国です。
好立地である沿岸部の土地を、たいした利益が見込めない採石場として活用するより、他の産業に利用する方がよほど経済効果があるとの中国政府の判断で、数多くあった福建省の採石場は大半が閉鎖となっています。
中国を代表する白系みかげ石である「G623」や「AG98」などが、その代表格です。
現在、中国で採石されている石材は、北東部の黒龍江省や吉林省、内陸部の湖南省が主になっています。
これまでは、白系・青系・緑系・茶系・ピンク系など、様々な種類の石材が売りの中国産石材でしたが、今や限られた石種のみになってしまいました。
色遣いにこだわったデザイン墓石をお考えの方には、少々影響がありそうですね。
5.円安+諸物価の上昇
中国産墓石の販売価格に直結するのが急激な円安と、原油価格の高騰等による諸物価の上昇です。
2022年1月には1ドル115円程度であった円相場が、10月20日には150円台まで値下がりしました。
中国でつくられた墓石を輸入する際の支払いは、すべてドル建てです。
人民元では支払えないのです。
為替レートが、1ドル115円から150円になったということは、単純に計算すると、これまで115万円で仕入れていた墓石が150万円になるということです。
率にすると、なんと30%以上の値上がりです。
それに加え、原油価格など諸物価高騰の影響による輸送費の値上がりも輸入価格に大きく影響を及ぼしています。
じゃあ、その仕入れ価格の上昇を、すべて販売価格に転嫁できるかというと、そんなわけにはいきません。
かといって、石材商社や石材店など、売り手側が企業努力で値上がり分をすべて吸収するには、かなりの無理があるほどのコストアップなのです。
そうなると、いかにして販売価格を抑えるかが課題になってきます。
そこで心配なのが、品質の低下です。
- 同じ石種であっても低ランクの石を使う
- 中国の中でも技術力の低い安価な工場でつくる
- 墓石に使う石の使用量を減らす
- 墓地での工事・施工の簡略化
などの方法で、見た目の販売価格だけを抑えるために、「安かろう悪かろう」の墓石を提供されたとしても、消費者側としては、お墓の購入経験がないだけに、品質の善し悪しを判断するのは難しいでしょうね。
トラブルになるのは、お墓が建ち上がってしばらくしてからです。
これからのお墓選びは、「値段だけ」で選ぶのは、ますます危険になってなってくるということです。
6.まとめ
平成の初め頃から始まった中国でのお墓づくり。
安い労働力を武器に、安価な墓石を日本市場に提供してきた中国産墓石ですが、近年は大きな変化が見られます。
その中でも、特に大きな影響が出ているのが、新型コロナと2022年の急激な円安です。
そんな状況下であっても、今や日本の墓石業界では、中国抜きでは立ち行かないのが現状です。
わずか数か月で30%を超える円安や、原油高など諸物価の高騰は、石材商社や石材店の企業努力ですべてを吸収できる限度を超えています。
かといって、素材や施工などの品質を落として良いとは言えません。
お墓は、天然の石を人の手で一つひとつつくり上げていくものだけに、二つとして同じものはありません。
- 素材である石材の品質
- 石材加工工場の技術力
- 石材店ごとに異なる構造・設計
- 墓地での工事・施工
お墓は、工業製品のように良質廉価の商品を大量生産することができません。
そうなると、激安は無理としても、適正価格で良質な中国産墓石を手に入れるためには、石材店選びが最も重要となってきます。
「良いお墓選びは良い石材店選び」と言っても過言ではありません。
つまり、何よりも石材店の経営方針が品質の善し悪しに直結する商品なのです。
『高品質で良心価格の中国産墓石を提供するために石材店が下した決断』
『中国産のお墓選びで値段以上に注意すべき4つの重要ポイント!』
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