デザイン墓石建立者必読!お墓は故人の生き様であり家族の歴史である

お墓はいったい何のために建てるのでしょう?
- 亡くなった人のお骨を納めるためですか?
- 故人を偲び供養するためですか?
こんにちは。(一社)日本石材産業協会認定「1級お墓ディレクター」の能島孝志です。
兵庫県神戸市で、“カロート(納骨室)に水が入らない特許構造墓石”『信頼棺®』を販売する、(株)第一石材の代表を務めさせていただいております。
能島
いきなり、こんなふうに聞かれてもなかなか明確な答えなんて出てきませんよね。
それだけ、お墓を建てるということは、日本人にとって、ごくごく自然なことだったのです。
しかし、この当たり前であったことが、最近ではお墓以外の葬送方法の登場により少々事情が変わってきています。
そんな中でも、故人の生きた証をお墓に表したいと考える人もいらっしゃいます。
そこで、少し前になりますが、亡きお父様の生き様を墓碑に表したいという想いでお墓を建てられた河井様の建墓記録をご紹介いたします。
なお、今回の記事は、石材関連業界紙である日本石材工業新聞に掲載された内容をすべて原文のまま引用紹介させていただきます。
想いをカタチに残したいと考えている人には必読の内容です。
目次
1.「形式にとわわれないお墓を建てたかった」/河井敏明さん(京都府京都市)「建墓物語Vol.17」(日本石材工業新聞・第1978号)
お墓をつくることは一生に一度の大事業。
それぞれの建墓実例には様々なエピソードがあり、石材店にとっても深い学びが込められている。
今回の建墓物語は兵庫県蘆屋市の芦屋市霊園に、木造建築にヒントを得た独創的なデザイン墓石(『霊園ガイド』主催「第19回墓石大賞」受賞)を建立された、河井敏明さんの物語を紹介する。
河井さんは多くのビルの設計を手掛ける建築家である。
2.父のためのお墓を・・・
京都市下京区のからすま京都ホテルで、建墓についてのお話を伺った河井敏明さんは、現在45歳(2013年時点)。
京都市内に事務所を構え、ビルを中心に多くの設計を手掛ける建築家として活躍中である。
この日は忙しいお仕事の合間を縫って、インタビューのためにお時間を割いていただいた。
河井さんがお墓を建てたのは、お父様が安らかに眠ることのできる場所をつくってあげたいとの想いからだった。
「医師だった父は、平成4年12月に、病気のために亡くなりました。ちょうど60歳でした」
当時、河井家にはお父様のお骨を納めるためのお墓がなかった。
お父様の故郷である茨城県には先祖代々の墓があったのだが、芦屋市の実家から遠いため、そこでは将来的に家族がお参りしにくくなってしまう。
そこで、「お墓が見つかるまでは…」と、ご自宅で遺骨をお祀りしていたという。
しかし、適切な場所がなかなか見つからず、いつしか10年以上の歳月が流れていた。
「そんな時、たまたま神戸の第一石材さんから、実家の母に電話が掛かってきたんです」
お墓で悩むお母様に石材店から掛かってきた1本の電話・・・。
それは、実は間違い電話だった。
「後になって話を聞いたら、第一石材の能島社長が他のお客さんに掛けるつもりだった電話が、たまたま母のところに繋がったようなんです」
兵庫県神戸市に本社を置く石材店第一石材の能島氏から電話を受けたお母様は、芦屋市霊園でお墓を建てられるかどうかを相談したという。
そして、何度かの打ち合わせを重ねた後、芦屋市霊園の墓地使用者募集に応募、3.0㎡の区画が当選されたそうだ。
平成18年のことだった。
兵庫県芦屋市の芦屋市霊園は、昭和28年開設の市営霊園で、園内には小川が流れ、墓域から大阪湾が見渡せる抜群の眺望が人気である。
「実家からは車で10分ほどの距離なんです。お墓を建てるならここがいいんじゃないかと、以前から母と話していました。
3.お墓は自分でデザインしたかった
芦屋市霊園に墓所を確保し、施工石材店も決まったため、河井さんは早速お墓づくりに取り掛かった。
河井さんには、お父様のためのお墓について明確なイメージがあったという。
「父は形式にとらわれるのが嫌いな人でした。だから形式にとらわれないお墓を建ててあげるのが一番良いのではないかと考えたんです。それに我が家は神道なので、仏教的な形式の制約を受ける必要もありませんでした」
英国留学経験もある河井さんは、欧米では建築家がお墓をデザインするのはごく普通のことであり、自然に自分でデザインすることを考えたという。
「母に相談したら『そうしなさい』と言ってくれましたよ」
河井さんがお墓の条件として考えたのは、まず、装飾的ではなく、モダンでシンプルなもの、次に、単一の石材による墓碑ではなく、複数の石材を寄木細工のように組み合わせた墓碑を使用する、というものだった。
「異質の素材を組み合わせることによって、新しい魅力を創出するのが私のデザインの特徴でもあるので、お墓のこともそうした観点から考えてみました」
記者は、実際に河井さんがデザインされたという京都市内のオフィスビル(第15長谷ビル。中京区烏丸通四条上ル)を見せていただいたが、その外観は木材を使用した板張りで、天然素材ならではの温かみがあり、京都の街並みと見事に調和していた。
さらに、河井さんは、「父は心臓外科が専門だったのですが、心臓という臓器は二心房二心室という構造になっていて、四つの部屋が組み合わさることで、ひとつの臓器として機能しています。だから、石を組み合わせた墓碑の方が、父のお墓にふさわしいと感じました」と話してくれた。
4.永遠不滅のものでなくてもいい
河井さんはご自分のイメージするお墓を図面に起こし、能島氏に相談をした。
建築の専門家である河井さんには、当然、石材についての知識があったが、建築材と墓石材では、使用する石に違いがあるため、能島氏から石種を提示してもらったそうだ。
その結果、墓碑は中国産白系大理石と、ピンク系の御影石であるG663(中国福建省産出)に、蟻枘(ありほぞ)を設けて組み合わせることに決定した。
※蟻枘(ありほぞ):木材の先端を他の木材にはめ込むため、鳩尾(きゅうび)状に突出させた枘(ほぞ)
図面を見た能島氏の第一声は「できるかな?」だったと言って、河井さんは笑う。
「能島さんは、石に枘(ほぞ)を彫る加工場の問題と、大理石が酸性雨などの影響で劣化することを心配されていたようです」
その後、技術的な部分についてやり取りを重ね、お互いにアイディアを出し合い、少しずつクリアしていったと、河井さんは話す。
「大理石の劣化についてですが、私はお墓といえども、時間の経過とともに自然に風化していっても良いのではないかと思っているんです。永遠不滅のものをつくろうなどという気持ちはありませんでした」
また、話し合いを重ねるうちに、担当石材店に対する信頼感も増していったという。
「テクニカルな話し合いはありましたが、大きな問題はありませんでした。第一石材さんは、技術力に自信があるんだな、と感じました」
そして、外柵と拝石にはG623(中国福建省産出の白御影石)を使用し、花立はお墓のデザインに合うように、アルミを削り出したパーツをオーダーメイドで作成するということも順次決定した。
「石材加工については、第一石材さんにお任せしました。蟻枘の仕上がり具合などは写真で見せていただきましたが、よく出来ているなと思いましたよ」
石材を木材と同じように加工して、枘(ほぞ)で組み合わせるには、並々ならぬ苦労があったようだ。
しかし、高い技術力で困難を克服し、寄木細工を思わせる独創的なデザイン墓石が完成した。
平成19年のことである。
5.みんなに想像してほしい
河井さんはお母様と相談の上、墓石が完成するとすぐにお父様の遺骨をお墓に納めたそうだ。
お父様が亡くなられてから、すでに16年が経過していた。
「ずいぶん長いこと父を待たせてしまったので…。納骨の時は私の姉や弟をはじめ、主だった親族が集まりました」
実際にお墓を目にしたお母様は、その出来栄えを褒めてくれたそうだ。
「たしかに普通のお墓とは違うかもしれませんが、悪目立ちせず、嫌みのない、良いお墓をつくることができたのではないかと思っています」
芦屋市霊園の一角に建つ河井家之墓の前を通る人の中には、立ち止まって墓石をじっくりと眺めていく人も多いそうだ。
シンプルで飾りのない墓石を目にする人それぞれが「お墓の背景にあるストーリーを想像してくれるのが楽しみ」だと、河井さんは話す。
設計事務所の責任者として多忙な毎日を送る中、お彼岸やお盆、祥月命日などの節目には、必ずお参りに通われるという。
高齢のお母様を車に乗せて、一緒にお墓参りに行く時が、一番心が休まる時間であるという。
【取材協力:株式会社第一石材/取材:株式会社六月書房】
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。
河井家墓碑のデザインは「心臓」をモチーフにしたものだったのです。
お墓は、単に亡くなった人のお骨を納めてお祀りする場所というだけではなく、故人が生きた証であり家族の歴史であるとも言えるのです。
これは、近年登場した、樹木葬や合葬墓などでは叶いません。
海洋散骨においては、何も残らないので証どころではありません。
「お墓」であるからこそ、様々な想いをカタチに表すことができるのです。
人には誰しもその人しかない生き様があります。
家にはどの家にもそれぞれの歴史があります。
それをカタチとして残すことで、いつまでも自分のルーツに触れ後世に繋いでいくことができるのです。
最後になりますが、数ある石材店の中から、私ども第一石材を選んでくださった河井敏明様。
今回の「建墓物語」を取材していただいた株式会社六月書房様。
そして、今回の取材内容を掲載していただいた日本石材工業新聞社様。
あらためて、心から御礼申し上げます。
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ここまで読んでいただきありがとうございます。
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