庵治石の最高峰!「大丁場の庵治石」ってどんな石?
こんにちは。兵庫県神戸市兵庫区にある株式会社第一石材の能島です。
(一社)日本石材産業協会認定の「1級お墓ディレクター」です。
能島
日本で最も高価などころか、世界で最も値段の高い墓石材が、うどん県で有名な香川県にて産出される「庵治石(あじいし)」です。
庵治石の産地は、香川県高松市の東部にある、庵治町と牟礼(むれ)町の両方にまたがる「五剣山」という山の麓に位置します。
その昔、庵治町久通(くず)、牟礼町久通と呼ばれる町の堺の久通集落から、少し庵治町寄りにに「御用石」という庵治石の採石丁場がありました。
この丁場は、江戸時代の高松藩のお殿様御用達の石を採石した場所なのです。
そして、このあたり一帯を「大丁場(おおちょうば)」と呼びます。
その庵治石は、30カ所ほどの事業者(廃業・休業中を含む)の採石丁場から採石されますが、その中でも大丁場は最高品質の庵治石が産出される丁場として有名です。
庵治石というだけでも高級品なのに、その中の最高峰である大丁場の庵治石って、いったいどんな石なんでしょうね。
目次
1.世界で最も高価な墓石材「庵治石」の特徴
庵治石の採石丁場は、大きくは3つのエリアに分かれています。
まずは、今回ご紹介する「大丁場」。
そして、大丁場の東側に隣接する「野山丁場」と、北側(裏側)に位置する「庵治山丁場」があります。
庵治石の特徴は、何と言っても、極めて硬質な優れた石質です。
極めて硬質である理由は、庵治石を構成する主成分である、石英・長石・雲母などの鉱物の結晶が他の石と比べて小さく、結合がち密であることが挙げられます。
どのくらいの硬さかというと、水晶と同じモース硬度「7」という超硬質なのです。
そのため、小さくて細かな加工であっても、キレの良いシャープなラインで美しく仕上げることができるのです。
蓮華加工などの細かな細工を見ると、他の石との仕上がりの違いが一目瞭然でわかります。
また、庵治石を構成する鉱物の結晶が、ち密に結びついているため、水を含みにくく、磨き上げた艶も長く保たれ、長い年月を経ても風化しにくい、耐久性に優れた石と言えるでしょう。
ただ、庵治石が採れる五剣山の地盤はキズが多いため、墓石として使用できるのは、採石される庵治石全体のたった3~5%という僅かな量なのです。
この希少性も、庵治石が世界で最も高価な墓石材である所以です。
2.庵治石の中の庵治石と言われる「大丁場産の庵治石」
「大丁場」と称されるところには、10社(廃業・休業中を含む)の採石業者があります。
そして、それぞれのエリアによって、「庵治石細目(こまめ)」が採れたり、「庵治石中目(ちゅうめ)」が採れたりと、採れる庵治石が異なります。
また、自然の産物ゆえに、採石される年や時期によっても、石目や色目が微妙に異なるため、墓石などの製品に加工する際には卓越した技術を要するのです。
庵治石は、硬くて水を吸いにくいという優れた特質だけではなく、見た目の美しさにおいても群を抜いています。
その特徴の一つが、きめ細かな石肌です。
庵治石や大島石、天山石など、墓石に使用する多くの花崗岩は、石英・長石・雲母などの鉱物を主成分として構成されています。
それらの花崗岩の中でも、庵治石に含まれる鉱物の結晶は特に小さく、地質学的には「黒雲母細粒花崗閃緑岩」に分類されます。
さらに、庵治石には、他のほとんどの石には見ることのない最大の特徴があります。
それは、「斑(ふ)」が浮くという庵治石だけに見られる現象です。
石の表面に、湿り気、潤いを与えたように感じさせる、不思議なまだら模様が現れ、墓石全体が二重絣(かすり)の着物をまとったような美しさを見せてくれます。
しかし、この「班」が浮くという現象は、すべての庵治石に見られるわけではありません。
主に「庵治石細目」を中心に現れ、特に大丁場で採石される最高級品に現れるものは、濃淡のくっきりした、美しく均一な見事な「班」です。
庵治石細目には、小さな粒子の黒雲母が数多く含まれているため、磨き上げることによって、細かな絣模様のような柄が浮き出てくるのです。
逆に、「庵治石中目」は庵治石細目と比べると黒雲母の粒子が大きいため白く見え、少量の白雲母が混ざっているため銀粉を吹きかけたような輝きを見せるものもあります。
庵治石細目のようなはっきりとした斑は出にくいのですが、中には見事な斑が浮き出るものも稀にあります。
3.徹底したトレーサビリティで管理されている大丁場の庵治石
庵治石は誰でもが取り扱える石ではありません。
それは、
- 誰でもが採石業者から原石を買うことができない
- 誰しもが簡単に加工できる石ではない
という、2つの意味を持ちます。
つまり、庵治石に限っては、石材店が自社加工で墓石をつくれないということです。
庵治石が産出される「庵治・牟礼」地方は、石の産地というだけではなく、石材の加工地としても有名です。
茨城県の「真壁」、愛知県の「岡崎」と並び、日本三大石材加工地の一つとして名高い地域なのです。
この「庵治・牟礼」には、200軒近い石材加工関連工場がありますが、そのすべてが庵治石を取り扱えるわけではありません。
庵治石を取り扱うには、庵治産地における実績と信用、そしてつながりも重要視され、選ばれた加工業者に限られるのです。
特に、大丁場の庵治石は厳選された加工業者しか取り扱うことができません。
どの採石丁場で採れた庵治石が、どこの加工業者で墓石に加工され、どのようなルートでどこの石材店に販売されるのかを容易に知ることができるため、品質管理と乱売防止にもつながっています。
今の時代で言う「トレーサビリティ」が、はるか昔からきちんと行われていたのです。
4.庵治石「大丁場の石」採石業者一覧(敬称略・五十音順)
庵治石の中でも、最も素晴らしい最高級の庵治石が産出される大丁場の庵治石。
それらは、以下の10社の採石業者(廃業・休業中を含む)のみで採石される貴重な自然界の産物なのです。
・有限会社太田秀雄石材店
・大谷産業株式会社
・株式会社岡谷石材
・有限会社木内石材商会
・大進石材株式会社
・田渕石材株式会社
・寺島石材
・中谷商事株式会社
・株式会社三好石材
・有限会社和伸石材
5.まとめ
庵治石が世界最高級の墓石材であることをご理解いただけましたでしょうか。
さらに、その中の最高峰として君臨する「大丁場の庵治石」って本当にすごいですね。
まさに、正真正銘のブランド墓石材です。
そして、名前と価格の高さだけが有名なのではなく、庵治石細目だけは誰が見ても一目で見分けがつくのです。
一般消費者でもです。
「お墓に使う石なんて、どれも大して見た目は変わらない」と言われる中、庵治石細目だけは違います。
ホントに誰が見ても分かるくらいの存在感があるのです。
お墓を建てるのは一生に一回。
そして、何代も長く使うものだけに、良いものを選びたいという方にはうってつけの石と言えるでしょう。
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