中国産やインド産墓石の石に石材店が独自の名前を付ける理由?
近年では、日本全国の市場に流通している80%以上の墓石が中国で加工されたものといわれています。
その中には、中国産の石やインド産の石でつくられた墓石が数多く含まれています。
当然のことですが、いい石もそうでない石もあります。
こんにちは。(一社)日本石材産業協会認定「1級お墓ディレクター」の能島孝志です。
兵庫県神戸市で、“カロート(納骨室)に水が入らない特許構造墓石”『信頼棺®』を販売する、(株)第一石材の代表を務めさせていただいております。
能島
問題は、それらの石に好き勝手な名前を付けて販売している石材店があるということです。
当社も、お客様からの依頼で他社様の御見積書を拝見させていただくことがあるのですが、そこに書かれてある石の名前がまったくわからないときがあります。
それが、見たことも聞いたこともない名前の石なのです。
私が無知なのではないですよ(笑)
では、いったい何が目的で、わざわざそのようなことをするのでしょうか?
実は、そこには2つの大きな理由があるのです。
では、早速ご説明させていただきます。
1.高級感を抱かせるため
国産墓石の材料となる、日本で採掘される石には、「庵治石」「本小松石」「大島石」「万成石」「天山石」など、それぞれの石材に、きちんとした名前が付いています。
しかし、中国で採掘される石にはそのような名前が付いているものは少なく、「G623」「AG98」「101CA」「K12」「G663」「G354」など、アルファベットと数字で表記された名称の石材がほとんどです。
インドで採掘される石も、「M-1H」「MU」「YKD」など、中国産と同様の名前の付け方をした石が数多く見受けられます。
これらは、その石が採掘される地域や採石場の記号や番号が、そのまま石材の名称となったものが数多くあります。
そして、墓石として製品加工され日本に輸出される際にも、その石材の正式名称として、これらの記号が使用されるのです。
では、なぜ元々の名称を変える必要があるのでしょうか?
それは、私たちのように墓石の販売に従事している者であれば、これらの名称は日ごろから聞き慣れていますので特に違和感はありません。
しかし、石材店の店頭に「高級みかげ石“AG98”」と掲示された墓石を消費者が見たときに、はたして高級みかげ石のイメージを持ってくれるでしょうか?
消費者から見れば、「AG98」や「C623」などと表記されていると、自然の石ではなくて人工の石だと思っている人もいるようです。
また、販売する側も同様に、「安っぽいイメージのため売りにくい!」
…と思っている石材店や霊園なども少なくありません。
このような理由から、自社が取り扱う中国産やインド産の墓石を消費者に少しでも高級感を抱かせる方策として、それぞれの石に好き勝手な名前を付けて販売する石材商社や石材店・霊園・仏壇店があるのです。
2.相見積もりをしにくくするため
中国産やインド産の石に石材店が好き勝手な名前を付ける場合、消費者が錯覚するようなまぎらわしい名称もあります。
たとえば、香川県にて採掘される最高級墓石材「庵治石」に、色目や石目の雰囲気が少し似ているというだけで「中国庵治」とか「○○庵治」などの名前を付けたり、愛媛県の高級墓石材「大島石」に似ていれば「新大島」や「△△大島」などと適当に付けられるのです。
日本で採掘される、正真正銘の「庵治石」や「大島石」と比較すると、見た目の風合いも石質等もまったく異なり似て非なるものなのですが、消費者側からすれば、かなりまぎらわしい名称なのは確かです。
石材店等が、独自の名称を付ける目的としては、高級なイメージを出すためと、もう一つは、他社と相見積もりになった場合に見積書を見比べてても実際にどの石で見積りをしたのかをわかりにくくするためでもあるのです。
しかし、まだ「○○庵治」や「△△大島」などはマシな方です。
なぜならば、中国産のどの石にそのような名前を付けたかが、プロの石材店ならば、おおよその想像できるからです。
これが、「庵治石」や「大島石」とはまったく関係のない、「雲龍石」や「白鷺石」などの名前が付けられている場合には、本来の石種を想定するのはかなり難しくなるでしょう。
たとえて言うならば、スーパーの鮮魚コーナーに並べられている魚が、スーパーごとに、まちまちの名前が付けられていたとしたらどうしますか?
魚の場合は、種類や地域によって呼び名が異なる場合はありますが、「マグロ」や「カツオ」が、それぞれの店で違った名前で売られることになるのです。
もし、そんなことになればきっと大問題になりますよね。
3.まとめ
いかがでしたか。
外国産石材に、石材店が好き勝手に独自の名前を付ける理由をおわかりいただけましたでしょうか。
一般社会では、とんでもない大問題となってしまうようなことが、墓石業界では、ごく普通に当たり前のように行われているのです。
また、トラブルの原因となることも珍しくなく、消費者への不信感につながってしまう恐れもあります。
日本最大の石材関連業界団体である(一社)日本石材産業協会でも、こうした業界の不信感を払拭し、消費者への信頼を築く意味でも石種の名称統一を目指してきましたが、規定法律や強制力がないため、どうすることもできないのが現状です。
これらの、まぎらわしい名称は、墓石を加工する中国側が行なっているわけではなく、日本国内の墓石販売に携わる各会社が利益追求を目的に行っているものです。
独自の名称を付けること自体には、法的にも問題ないのかも知れませんが、消費者の立場に立った良心的な商売とは言い難いものであります。
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