8.国産墓石と中国産墓石の研磨と加工精度

「砥石」による研磨と「バフ」による研磨の違い
今回のテーマは、国産墓石と中国産墓石の研磨、
いわゆる、墓石加工の最終工程である艶出し作業と、
水平レベル、直角レベル等の加工精度に関する違いのお話です。
墓石を磨き上げる研磨工程については、大きく分けると、
「砥石」による研磨と「バフ」による研磨とに分かれます。
▲日本国内の石材加工工場における自動研磨工程
日本国内でも、最高レベルの加工技術を誇る石材加工工場が集まる、
四国・香川県の「庵治・牟礼」の、一流石材加工工場では、
7?8種類の目の粗い砥石から、目の細かい砥石を用い、
石の表面が鏡のようになるまで、長い時間をかけて丁寧に磨き上げます。
ゆっくりと、時間をかけて磨き上げた墓石は艶が長持ちします。
しかし、砥石を主体とした研磨方法は手間と時間を要します。
そうなると、安価に仕上げるためには、コストがかかってしまい、
消費者に安く墓石を提供することが難しくなってきます。
▲中国の石材加工工場でのバフによる研磨風景
こうしたコスト面での理由で、中国の石材加工工場での墓石研磨は、
砥石だけではなく、「バフ」を多用した研磨が主体となっています。
バフによる墓石の研磨は、砥石による研磨と比較すると、
半分程度の手間と時間で済むため、コストダウンには欠かせません。
しかし、バフ仕上げの場合は、研磨を行う際に、
石の表面に、ある程度の熱を加えないと艶が出にくいため、
艶を出そうとすると、必然的に石の表面は高温になります。
通常、石材を磨く時には大量の水を出し、
石の表面を冷やしながら磨いていくのですが、
より早く、墓石等の製品として仕上げるためには、
水の量を少なくして研磨をしている光景もよく見かけます。
このような方法で、バフ仕上げを行った石の表面は、
花崗岩の主成分の一つである雲母が剥離を起こし、
顕微鏡で見ると、石の表面が毛羽立ったような仕上がりになります。
また、高熱による研磨の影響で、石の表面が白濁化し、
艶の質感も悪く、奥行きのない光沢になる危険性もあります。
砥石仕上げでは、大量の水を出しながら研磨を行いますので、
摩擦による熱が低く、石の表面が傷みにくいのです。
研磨の仕上がり具合の違いを、プロが見れば一目瞭然!
砥石仕上げにて、時間をかけて磨き上げた墓石の方が、
高熱をかけ、バフにて短時間で磨いたものと比べると、
見た目だけの、表面だけの艶ではなく、
石の内側から出てくる、奥深い透明感のある艶が特徴で、
石本来が持つ、深みのある色艶が長年にわたり持続します。
▲中国の石材加工工場における手動研磨工程
中国の石材加工工場の中でも「砥石」を主体とした
研磨方法を取り入れているところもありますが、
日本の一流加工工場のレベルにはまだほど遠いものがあります。
逆に、日本国内のすべての石材加工工場が、
これまで述べてきたような丁寧な砥石仕上げで
墓石を加工・製作しているわけでもありません。
日本と中国の製品加工精度の違い
出来上がった製品の水平レベル、直角レベル等の加工精度については、
日本の石材加工工場で作られた製品の方が、格段に良いと言えるでしょう。
この加工精度の差の原因の一つ目は、日本の石材加工工場では、
コンピューター制御による、高性能の加工機械を使用して
墓石の加工・製作を行うのが現在では主となっていますが、
中国では、人件費の安さを武器に、人の手による加工が主となってきました。
そのため、直線、平面、水平、直角等の加工については、
優れた加工機械を使用するのとは違い、精度が悪くなりがちです。
二つ目は、やはり国民性の違いでしょう!
例え、1ミリの誤差であっても妥協しない、日本人の細かな職人気質と、
「1ミリ、2ミリに何が問題があるのか?」と、細かいことには頓着しない、
良い意味で言えば、中国人のおおらかな気質との違いがあります。
この気質の違いも、加工精度に大きく影響しているのです。
▲中国の彫刻専門工場における浮彫り彫刻
中国人の気質には、縦○○mm×横○○mm×奥行き○○mmというような製品より、
「オリジナルデザイン墓石」のように、アール加工等の特殊加工や、
手加工でしか出来ないような、彫刻品の加工・製作の方が合っているのかも知れません。
これらの違いを考えると、高級品である日本の石を使ったお墓をお考えならば、
日本の、それも技術レベルの高い石材加工工場でつくってもらうべきでしょう。
一方、外国産の石を使っての和型墓石や、オリジナルデザイン墓石をお考えならば、
中国の中でも、技術レベルの高い石材加工工場とパイプを持つ石材店に依頼すれば、
かなり安心度の高いお墓を建てることができるかと思います。
絶対にお薦めできないのが、「国産墓石(通称?)」と称する、
いわゆる、日本の石を中国の石材加工工場でつくったものには手を出さない方が賢明です!
少々、安く買ったつもりが、結局は高い買い物になりますよ!
【注】掲載の中国石材加工工場の写真と技術レベルとは一切関係ありません。