4.中国の賃金システムに起因するお墓の”ごまかし加工”
自然の大地から採掘された石は、天然のものゆえに、
キズやナデ(帯状の色ムラ)、タマ(斑点)等があり、
お墓をつくる際には、出来る限りそれらを避けながら加工していくのですが、
運良く、加工の初期段階に見つかることもあれば、
最終段階に突然、タマ(黒いもの、白いものがある)などが現れることがあります。
原石から製品に仕上げるには、何トンもある大きな石を切断し、
それから、お客様から指定された形に整えながら磨きの工程に入ります。
機械で磨ける部分もあれば、手磨きでしか出来ない部分もあります。
お墓の各部材の製作は、様々な工程を順に経ながら手間隙かけてつくられています。
形状によっては、一つの部材をつくるのに何日もの日数を要するものもあります。
仮に、お墓のある部材の製作に取り掛かって三日目の段階で、
黒い大きな黒い斑点(業界では”黒タマ”と言います)が出たとしましょう。
もちろん、いくら三日間費やしたからといって製品としては出荷できません。
つくった石職人も、「無駄な三日間を過ごした」ということになるのです。
原石の不具合で製品にならなかった場合は、賃金が支払われない?
そんな場合でも、日本の石材加工工場で働いている石職人の場合、
原石の不具合に関係なく、ほとんどの工場ではきちんと賃金は支払われるでしょう。
しかし、中国の石材加工工場の多くは、日本の様な固定給制度を取り入れておらず、
石職人に依頼した、お墓の一つの部材が完成し、検査に合格して、初めて賃金となるのです。
※中国の石材加工工場におけるお墓づくりは、日本の製作工程のように、
一人の石職人が「○○家のお墓」を責任を持ってつくり上げるというシステムではなく、
各部材ごとに製作する職人が異なり、それらを合体させて一つのお墓となる、
といった加工方式を行っているところが大半です。
そうすると、前述のようなアクシデントが起こった場合、
その石職人は、三日間タダ働きということになるのです。
職人側からすると、三日目に突然”黒タマ”が出てきたのは「自分のせいじゃない!」し、
地方から出稼ぎに出てきているのに「賃金をもらえないなんて納得できない!」
工場側も、日本側からかなり厳しい短納期の条件で注文を受けているため、
新たにつくり直すとなると、船積みの日に間に合わず、納期までに日本に着かない。
そうなると、納期遅れによる違約金等の問題に発展してしまうとまずい!
「なんとかいい方法はないものか……???」
そこで、行われるのがお墓の”ごまかし加工”なのです。
先ほどの”黒タマ”にごまかし加工をほどこし、ぱっと見ると分からない状態にし、
何事も無かったように船積みされ、日本へと送られ消費者の元に届くのです。
これで、中国の石材加工工場側も、納期遅れ等のトラブルに発展することもなく、
出稼ぎ労働者の石職人も、無事賃金をもらえることとなり万々歳です?
…と言いたいところですが、「どこが万々歳やねん!`ヘ´」
中国の石材加工工場側と職人はそれで万々歳かも分かりません。
石材店に製品を卸している日本の石材商社も、石材店からお金をもらえるから、
万々歳ではなくとも利益にはつながっているはずです。
石材店にしてもお客様からはお金を頂く訳ですから、商売にはなっているでしょう。
「じゃあ、消費者はどうなるのでしょう?」
お墓の”ごまかし加工”は、このような方法だけではなく、
熱処理、薬品、着色など、ありとあらゆゆ方法で現在も行われているのです。
残念ながら、現在これらを規制する法律はありません。
しかし、法律的には問題なくとも、モラルとしてはどうかと考えます。
やはり、お墓の制作を中国の石材加工工場に頼らなくては、
どうしようもない現在の日本の現状においては「自分自身で中国に行くしかありません!」