庵治石の優れた特徴の理由が「新鮮」ってどういうこと?
こんにちは。兵庫県神戸市兵庫区にある株式会社第一石材の能島です。
(一社)日本石材産業協会認定の「1級お墓ディレクター」です。
のじま
「鮮度」といえば、私たちの身の回りでは、肉や魚・野菜などの生鮮食料品が思い浮かびますよね。
しかし、お墓に使う石にも鮮度があるのです。
お墓に使用する「みかげ石」と呼ばれる石は、火山が地中深くで噴火し、マグマが地中で長い時間をかけて冷えて固まってできたものであり、学名上は「花崗岩」や「安山岩」と呼ばれる鉱物です。
そして、これらの形成過程において、経過時間が新しいもの、いわゆる「新鮮」な石の方が品質が優れているようです。
つまり、山から切り出して、墓石として加工をしなくても、自然の岩肌の状態や地中に埋もれている状態でも、わずかずつですが経年による劣化が始まっているということなのです。
それゆえに、石が形成された時期が古いものより新しい方が、新鮮で品質的にも良い石と言えるものが多いということです。
お墓に使用するのは「日本の石が良い!」と言われる理由の一つに、この「鮮度」が関係しているようです。
そこで今回の記事は、新鮮かつ世界一高価な墓石材として有名な、香川県産「庵治石(あじいし)」の鮮度について迫ってみたいと思います。
1.庵治石は硬くて新鮮!?
庵治石は、約8000何年前の中生代白亜紀頃に形成され、地質学的には世界中の花崗岩の中では比較的新しい部類に入ります。
でも、いきなり8000万年前と言われてもピンときませんよね。
いったいどんな時代だったのでしょう?
私たちが住む地球は、今から約46億年前に誕生し、約40億年後に空気が存在するようになりました。
今から約6億年前ということです。
そして、約1億年前には恐竜の全盛期を迎えます。
その後の約7500万年前にメキシコのユカタン半島に直径11㎞の巨大隕石が激突し、地球上の半分以上の生物が絶滅したようです。
直径11㎞の隕石と言っても、どのくらいの大きさなのか想像もつかないかと思いますが、東京ドームの直径が約244mなので、おおよそその45倍の大きさの隕石が落ちてきたことになります。
当然、恐竜も絶滅しました。
時代は、中生代が終わり新生代へと移り、この頃に庵治石が形成されたのです。
そして、約400万年前頃から地球上の人類が進化をはじめました。
さらに年月は進み、庵治石が使われ始めたのが今から約400年前のことです。
外国産の花崗岩の多くは、1億年以上前に形成されたものが多いのに比べ、庵治石は6000~8000万年前と鮮度が新しいため劣化が少ないのです。
また、庵治石を形成する主成分である、長石・石英・雲母などの鉱物の結合がち密で結びつきが強いため、極めて硬い石質を誇ります。
その極めて硬い性質ゆえ扱いにくく、庵治石の加工には卓越した技術力と根気が必要となりますが、「やくもの」と呼ばれる墓石の特殊加工や仏像などの彫刻品においては、きめ細かなラインや表情を表現でき、他の石でつくられたものと比較にならないくらい美しく仕上がります。
2.庵治石は水に強い
庵治石を構成する主成分である、長石・石英・雲母などの鉱物の結合がち密で結びつきが強いため、水を含みにくい低い「吸水率」も優れた特長の一つです。
吸水率の測定方法は、一定の大きさにカットした試験体(石)の乾燥時の重量と、48時間水に浸けた後の重量を測り割り出します。
花崗岩の吸水率は石種によって異なりますが、おおよそ0.1%~0.4%程度です。
ちなみに庵治石の吸水率は、
- 庵治石細目…0.19%
- 庵治石中目…0.20%
と低い数値になっています。
お墓は長い年月に渡り屋外にあり続けるため、吸い込んだ雨水は、石に含まれる鉄分に反応して、サビや変色の原因となります。
また、水が凍りになる際には体積が約9%増加しますので、寒冷地などでは凍結により内部の組織が徐々にですが破壊されて、風化につながっていくのです。
庵治石は、低い吸水率で極めて水を含みにくい石質のため、雨が降った後の水シミもほとんど目立たず、風化に強い耐久性に優れた石と言えるでしょう。
3.庵治石は変色・変質しにくい
お墓は長い年月にわたり、屋外にあり続けるものだけに、
- 雨による吸水
- 風によって吹き付けられる砂
- 寒暖による温度差
など、さまざまな自然環境と経年により、変色したり、表面の艶がなくなったりします。
しかし、庵治石は、0.19%~0.20%という低い吸水率に加え、黒雲母の中に含まれる鉄分の含有量が他の花崗岩と比べて極めて少ないので、良質の庵治石を使用した墓石ならば、艶落ちも少なく経年劣化に強い石と言えます。
また、石の硬さを表す「圧縮強度」も、1平方cmあたり2000kgを超える負荷に耐えるほどの硬さを有するため、建立後100年以上経った墓石でも、彫刻した文字がくっきり見えるのも庵治石ならではの特徴です。
何年経っても、庵治石の特有のきめ細かな石目模様が美しく、変色・変質などの経年劣化が少ないため、いつまでも綺麗な状態が続きます。
4.庵治石は酸に強い
お墓に使われる石は、炭酸ガスや亜硫酸ガス等によっても影響を受けます。
しかし、庵治石は他の墓石材と比較すると、化学変化に極めて強い石と言えます。
近年における地球環境は悪化しています。
車の排気ガスや工場の煙などには酸性の大気汚染物質が多く含まれており、それらをを取り込んで降る酸性雨には窒素酸化物や硫黄酸化物が含まれております。
これらの大半は一酸化炭素や二酸化硫黄で、大気中で水蒸気と合わさることによる化学反応により酸性度の強い硫酸や硝酸を生み出します。
庵治石は、これらの酸にも強いため、細かな細工を施した部分の劣化や、彫刻文字が崩れて読めなくなるようなことがほとんどないのです。
5.まとめ
いかがでしたか。
石にも「鮮度」があることをご理解いただけましたでしょうか?
庵治石は、数多くの優れた特徴により評価が高まりました。
第二次世界大戦後に機械化が急速に進み、加工や研磨精度が格段と良くなってからは、さらに需要が伸び、価格も急騰し、その希少価値が認められるようになりました。
けれども、近年においては、一部の庵治石も中国の石材加工工場に送られ、墓石として完全に製品化されたものが再度輸入され市場に流通しています。
卓越した技術を誇る「庵治・牟礼」の石職人の技術を以ってしても、最も加工が難しいと言われる庵治石をわざわざ中国で加工するということは、製品の良し悪しなどは関係なく、単に利益追求が目的としか考えられません。
庵治石だけに限らず、大島石や天山石などの日本の石を中国で加工された墓石は、すべてにおいて、安心してお買い求めいただける商品とは言い難いものです。
いくら新鮮な素材を使っても、つくり手の腕が悪ければ良い墓石にはならないということです。
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