デザイン墓石でトラブルになる理由は石材業界事情にあった
こんにちは。兵庫県神戸市兵庫区にある株式会社第一石材の能島です。
(一社)日本石材産業協会認定の「1級お墓ディレクター」です。
能島
このページをご覧になっているということは、きっとお墓のデザインで悩んでいるのではないかと思います。
誰しもが、好みに合ったデザインにしたいと考えるのは当然のことでしょう。
でも、具体的にどのようなデザインにしたらいいのかわからない。
こんな悩みを抱えている人は少なくないはずです。
デザイン墓石を建てるとなっても、具体的なデザインを自分で決めることができる人なんてごくわずかです。
そりゃあ、プロのデザイナーでもない限り、そんな簡単にデザインができるわけありません。
そんなわけで、多くの人は石材店に相談するのですが、ここからが問題なのです。
では、何がどう問題なのか?今から詳しくご説明させていただきます。
目次
1.お墓のデザインは無料で当たり前
世の中にはあらゆる分野のプロがいます。
- 料理界には板前やシェフ。
- ワインにはソムリエ。
- 墓石業界なら「石工」と呼ばれる石職人。
そして、「デザイン」はデザイナー。
お墓のデザインにも、プロのデザイナーが関わってもいいはずなのですが、なぜかそのようなケースはごくわずかと言っていいでしょう。
その理由はいくつか考えられますが、最大の原因としては、お墓のデザインは消費者からデザイン料をもらえないということにあります。
つまり、ほとんどの場合、お墓のデザインは「無料で当たり前」なのです。
建築物の設計は総工費の10%前後の設計料が必要ですし、ブランド製品などは商品価格にデザイン料が含まれています。
このように、世の中のあらゆるモノのデザインには、「デザイン料」が発生するのは当然のことなのです。
しかし、お墓の場合は少し事情が違うようです。
2.知的財産にお金を支払うことに納得がいかない業界体質
墓石のデザインを、プロのデザイナーが手掛けないもう一つの理由は石材店側にあります。
それは、「デザイン」というカタチがないものに費用を掛けることを嫌う経営者が意外と多い業界なのです。
「デザイン墓石」と呼ばれるものが流通するようになったのは平成の初め頃の1990年代頃からです。
おそらく、見よう見まねで取り組んできた石材店も少なくありません。
近年になって、ようやく墓石デザイナーと呼ばれる人たちが一部の石材店とコラボを展開し、ようやくプロが参入しはじめました。
当然、デザイナーとの間に契約費用は発生します。
これらは「デザイナーズブランド墓石」と呼ばれ、これまでのデザイン墓石とは一線を画する存在になりつつあります。
その他にも、デザイン墓石を専門に取り扱う石材商社がありますが、プロのデザイナーがデザインした製品を取り扱っている関係上、若干高めの価格設定がされています。
プロが手掛けるものだけに洗練されたデザインなのですが、デザイン料を含んだ若干高めの価格設定という点が、どうも納得がいかないという石材店も少なくありません。
お墓の材料となる石の仕入れや、墓地での施工に使う高価な機材に費用が発生するのは理解できるのですが、デザインや特許構造などの「理的財産」にかかる費用に関しては、いくらわずかであっても納得がいかないようです。
3.「デザイン墓石」のデザインは誰がするのか?
お墓のデザインに関しては、長年の慣習でサービス的要素になっているのが事実です。
そうなると、石材店としてもできるだけコストは抑えたいところです。
- プロのデザイナーにデザインを頼めば費用が掛かる
- デザイン墓石専門商社が取り扱う墓石は割高
これらを使わないとなれば、石材店が自らデザインするしかないのです。
- 店主自ら
- 営業マン
- 事務担当社員
などが、墓石のデザインするしか仕方ありません。
もしくは、お客様からデザイン墓石の見積もり依頼があると、取り引きのある石材商社に「何か考えてくれ!」と丸投げ。
究極は、よそのお墓のデザインを丸ごとパクるといった行為に及ぶことも珍しくありません。
4.どうすれば満足のいくデザイン墓石ができるのか?
実は、お墓のデザインに関するトラブルは意外と多いのです。
注文したお墓が完成したにもかかわらず、「想っていたものと違う!」というものです。
実際に国民生活センターにも、お墓のデザインに関するトラブル相談が数多く寄せられています。
このデータは、2015年に一般社団法人日本石材産業協会が国民生活センターに対して行った「墓地、墓石・石材に関するクレームアンケート」の結果を集計したものです。
全体で約1200件あったクレーム相談の中で、「材質・デザイン・サイズなどが違う」という内容が約1割を占めています。
さらに細かく見ていくと、
材質・デザイン・サイズが違う・・・10%
- 注文した墓石とできあがった墓石が違う。
- 石の産地の説明に誤りがあった。
- 材質、デザインのイメージが違う。
- できあがりの寸法が注文と異なる。
- パンフレットを見て工事依頼をしたのに、仕上がりはパンフレットの仕様と大きく違い、工事もずさん。
このような内訳になっています。
結局は、「石材店がつくったお墓とお客様が想っていたものとは違う」ということなのです。
では、このようなことにならないためにはどうすればいいのでしょうか?
それは、石材店選びにつきます。
つまり、「デザイン墓石」の製作を得意とする石材店に依頼するということです。
そのためには、依頼する石材店を簡単に決めないことです。
- 大手石材店だから
- 地元の老舗石材店だから
- 本家が建てた石材店だから
これらは、デザイン墓石づくりのスキルとは全く関係ありません。
また、見た目だけのデザイン墓石では「良いデザイン墓石」とは言えません。
- 車イスでもお参りできるバリアフリー設計
- お墓掃除の後にちょっと一息つけるベンチ付き
- ご先祖様の快適な住まいのためのカロート(納骨室)に水が入らないお墓
など、何らかの悩みや問題を解決できる要素を含めての「デザイン」なのです。
5.まとめ
どこの石材店でもデザイン墓石がつくれると思っている人がほとんどでしょう。
でも、実際にはそう簡単にいかないのです。
100年以上、蕎麦一筋で商売をしてきた蕎麦屋が、見よう見まねでフレンチに挑戦するようなものです。
同じ料理という分野であっても、蕎麦とフレンチとでは全く違います。
また、「デザイン」とは見た目だけではないことも知っておくべきです。
お墓をデザインするということは、和型を洋型にすることではありません。
美観性・機能性・安全性など、あらゆる観点から満足度を追求し、それをカタチに表すことこそが本当のデザインなのです。
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