お墓・墓石はどこでつくられているのか?
こんにちは。兵庫県神戸市兵庫区にある株式会社第一石材の能島です。
(一社)日本石材産業協会認定の「1級お墓ディレクター」です。
能島
いきなりですが、あなたが石材店に注文したお墓は、どこでつくられているのでしょう?
もしかしたら、「何を今さらそんなこと!石材店の工場に決まってるじゃない」と、思っている消費者は意外と多いのではではないでしょうか?
たしかに、多くの石材店には工場があるし、そのように思われても不思議ではありませんし、あながち間違いではありません。
今回の記事は、一般消費者にはあまり知られていない、お墓の流通経路についてちょっと触れてみましょう。
目次
1.墓石はいったいどこでつくられるのか?
石材店が採石業者から原石状態の石を仕入れて、自社の工場で石を加工して墓石につくり上げるのを「自社加工」と言います。
たしかに、今でもないことはありませんが、近年では極めて少なく、都市部の石材店では、ほとんどないと言ってもいいくらいです。
それどころか、今や日本国内に流通している墓石製品の80%以上が中国でつくられているのです。
それゆえ、たとえ自社加工を行っている石材店であっても、多くは国産の石に限られます。
外国産の石を輸入して自社加工をしている石材店となると、さらにめずらしい存在でしょう。
しかし、お墓購入層の多くが団塊世代のため、その方たちが若かりし頃の1974年(昭和49年)に平均視聴率31.3%を記録した、東京下町の石屋を描いた人気テレビドラマ「寺内貫太郎一家」の印象が強いせいか、お墓はすべて「自社加工」と思い込んでいる人が多いのです。
多くの石材店の中に工場があるのは、今は自社加工をやってなくても、その昔は自社でお墓をつくっていた頃のなごりなのです。
では、「自社加工」なら、品質の良いお墓ができるのかというと、必ずしもそうとは言えません。
人の手でつくるものだけに、加工の技術は石材店により様々です。
けれども、一般消費者からすれば自社加工は安心材料につながることは事実です。
- 自家焙煎コーヒー
- 手打ちうどん
- ○○さんがつくった野菜
などと、同じ感覚なんですね。
実は、一般消費者のこの心理を逆手にとって、自社加工などまったく行っていないにもかかわらず、いかにも「ここでお墓をつくっています」といわんばかりに工場内を案内する石材店もあるのです。
事実、そのように思い込んでいたというお客様の話を耳にすることがあります。
ちょうど、悪徳商法の「消防署の方から消火器の点検に来ました」と同じです。
「消防署から」ではなく、消防署の「方から」来たということです。
さすがに、これでだまされませんよね!
2.お墓づくりも分業化の時代
その昔、墓石加工のすべてを手作業で行っていた時代には、石材店、いわゆる「石屋」の石職人が自社で加工していました。
しかし、石を切ったり磨いたりする加工工程の機械化が進むにつれ、墓石の加工・製作も他の製品と同様に分業化されてきました。
- 山から石を切り出し、原石を販売する「採石業者」
- 採石業者から原石を仕入れ、墓石製品に加工する「加工工場」
- 蓮華加工など細工物の加工を行う「やくもの加工専門工場」
- 仏像・燈籠などの「彫刻工場」
- 文字彫刻を専門に扱う「字彫り工場」
- 墓地での工事・施工を専門とする「施工専門業者」
などがあり、加工工場の多くは、原石を入手しやすく取り替えもしやすい、原石産地の周辺に多く集まっています。
日本三大石材加工地と呼ばれる、
- 香川県の「庵治・牟礼(あじ・むれ)」
- 愛知県の「岡崎」
- 茨城県の「真壁(まかべ)」
などが有名です。
これらは「産地加工」と呼ばれ、技術力の高い加工工場が集まっている地域です。
産地加工工場でつくられる国産墓石なら安心度は高いのですが、日本の石も大量に中国に送られ、中国の石材加工工場でつくられる「中国加工の国産墓石」というものが主流になっています。
これは、値段の安さだけを求めた結果であり、いい墓石をつくることが目的ではありません。
お墓づくりの分業化には、「中国加工」という分野も含まれるのです。
国産墓石だからといって、必ずしも日本でつくられているわけではないのですよ。
3.墓石の大半は中国でつくられている
墓石製品は、日本以外にも中国、インド、ベトナムなどの外国でも数多くつくられています。
その中でも、大半を占めるのが中国です。
では、それぞれの石材店が、中国の石材加工工場に墓石を注文するのかというと、そうではありません。
一般的には、石材商社と呼ばれる卸売りを専門とする業者を通じて中国加工の墓石を注文します。
つまり、石材店は、墓石として完全にでき上がったものを墓地で組み立てていくというわけです。
石材店が、お客様から注文を受けたお墓を、石材商社を通じて中国のどこかの石材加工工場でつくってもらうのですが、中国の工場には技術力の高い工場も、そうでないところもあります。
どこの工場を選ぶのかは、石材商社の取引範囲や、石材店が望む仕入れ単価によって工場が限定されます。
ただ、ほとんどの場合、消費者はもちろんのこと、石材店もどこの工場でつくられているのかはわかりません。
また、石材商社側が、どの技術レベルの加工工場と親密な関係にあるかによっても使う工場が異なってきます。
特に、中国加工の場合は、技術レベルの差は顕著に表れます。
つまり、石材店が中国事情に精通しているかどうかが、消費者のお墓の品質に大きく影響してくるというわけです。。
4.まとめ
いかがでしたか。
ちよっと、意外でしたか?
「中国産の墓石とは聞いていたけど、中国から石を輸入して、石材店の工場でつくられるものだと思っていた」なんて思っていませんでしたか?
でも、実際は違うのです。
テレビCMで有名な大手の石材店、老舗の石材店だからといって、必ずしもいいお墓ができ上がるとは限らない時代です。
流通経路次第で、お墓の当たり外れに大きく影響します。
いいお墓づくりとは、それほど難しいものなのです。
それを叶えてくれる石材店に出会うことが、唯一の解決方法だと言えるでしょう。
『 中国産墓石の品質のばらつきは流通システムと価格設定に原因がある』
『お墓・墓石の善し悪しは石材店の考え方次第で決まるという怖い話 』
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